● 概 要 |
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● 研究会について |
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● 東洋医学商会 |
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1、はじめに
鍼灸や整骨院などの臨床においても、五十肩は取り扱うことの多い疾患の一つであり、これまでに鍼灸の有効性に関する研究報告がいくつかなされている。その中で、今回は五十肩でも治療経過の異なる2症例についてその報告をする。
2、症例
【症例1】 H・Y 45歳(女性)職業‥主婦
主訴…左肩関節の痛み
現病歴…3月頃より、特に原因なく左肩に軽い痔痛を自覚するようになった。市販の湿布薬にて様子を見ていたが、徐々に動作時痛が強くなり、4月10日に来院し治療を開始することとなった。病院へ行っておらずレントゲンなどの情報はなにもない状態であった。
既往歴…特になし
身体所見…小柄で細身の体型 血圧100/50mmlfg
【症例2】 K・T 40歳(女性)職業‥パート
主訴…右肩関節の痛み
現病歴‥昨年5月頃から上腕部に疼痛を自覚し始め、徐々に増悪し肩に波及した。そのため、7月整形外科を受診。レントゲン所見で異常は見られず肩関節周囲炎と診断された。湿布薬を処方されたが変化が見られなかった。同年9月来院。
既往歴…特になし
身体所見…中肉中背やや肥満 血圧130/76mmlfg
症例1 疼痛部…左関節前面
痔痛の性質…動作痛(2+)腕の挙上は肩までで痛む。自発痛(-)動かない時は痛まない。夜間痛(1+)寝ていて痛みで起きる時もある。
症例2 疼痛部…右三角筋後部
疼痛の性質…動作痛(3+)腕の挙上は肩までも上がらない。非常に強い痛みを訴える。自発痛(+)動かさない時にも軽い痛みを感じる。夜間痛(2+)寝ていて痛みをよく感じる。
3、治療方法
症例1は経絡色体治療のみで治療を週1回のペースで行った。症例2は経絡色体治療と鍼治療を週1回のペースで行った。
4、治療経過
症例1は、経絡色体治療の主経絡はほとんどが「心包経」であった。パターンはBが比較的に多く、Aパターンは数回程度であった。主経の経穴は曲沢と内関を交互に使うことが多かったが、郄門の反応も見られた。治療直後から疼痛による可動域制限に若干の改善が得られたが大きな変化は得られなかった。治療回数を重ねるごとに改善が若干みれられた。まず夜間痛がなくなった。その後はあまり変化がなかったが3か月日に入り、ある時急に可動域が大きく改善し、その後症状は完治し終了した。
症例2は、経絡色体治療と鍼治療を併用した例である。この症例の主経絡は「肝経」であった。経穴は曲泉が圧倒的に多くパターンはAがほとんどでBが数回程度であったが、肝経の郄穴である中都の反応も見られた。治療は経絡色体治療後、鍼治療を行うことによって血流改善、筋緊張緩和がスムーズに行われ初回治療直後から動作痛は(1+)程度に改善が見られた。治療6回目で疼痛は消失し、可動域も健側と比べて差が無くなったため、治療全6回で改善終了とした。
5、考察
五十肩という肩関節の疼痛を伴う運動障害に対する経絡色体治療からの考察は、この病態には「心包経」と「肝経」の二つの主経絡が考えられる。この違いは疼痛部位や性質からでは判断がつかず主経を判断する過程においてその結論を出すことができる。「心包経」が主経絡の場合は、治療経過は芳しくなく若干の改善を繰り返すが、突然大きく改善する性質があると考えられ、他の治療法との併用は効果が薄いと推察する。「肝経」が主経絡の場合は、その病態により他の治療法を併用することで治療結果を変えることができるのではないかと推察する。
6、結論
この様に、一つの病態には違う性質があることがわかる。経絡色体治療の判定技術により正確にそれを把握し正しい治療を提供することが重要と考えられる。今後もこの課題を注視していこうと思う。 |
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